Masuk「トウチシャ……?」
頭の中で一瞬言語が正しく変換できずにカタコトになる皇。だが、そんな皇を見て、双鹿はちょっと驚いた顔をする。
「……もしかして、統治者も知らない?」
「知らないな……」
「本当の本気でビギナーなのね……」
そんな双鹿の呆れ顔。なんか特に罪悪感なんて感じる必要はないのに若干の申し訳なさを感じて。
「簡単に説明してあげるわ。文字の通り、ワールドを統治するプレイヤーのことを統治者って言うのだけれど……まあ、なにかをする訳ではないわね」
「え?」
「一応、ワールドを発展させる義務はあるのだけれど……そんなもの好き勝手やってれば基本的に勝手に繁栄していくものだし。だから、私は自分の店のことしかそんなにやってないわ」
(わあ、デキる人間の言葉だ……)<
そうして、時間が動き出す。ヴィクトは足を止め、秋峰に対して真っ直ぐ次元渡りの剣を向けた。 そして、それを横に薙ぐ。「気でも狂ったかッ!?」 そんな秋峰の声なんて気にしない。アザカとクロムの視線も気にしない。 そして、それは起こった。 横一文字に薙ぎ終えた瞬間だった、秋峰の懐、スーツがスーッ、と。まるでバターをバターナイフで切ったかのようにすっぱりと切れた。 すると、そこから勢いよく飛び出してくる水色の宝玉のついた鍵。(あれはッ……!) ヴィクトは直感した。あれは聖ユリア王国の神器の欠片だ、と。 そう判断した瞬間に、ヴィクトは地面を蹴った。そして、同時に。「なっ……渡すものかァッ!」 秋峰もまた走った。両者が手を伸ばしての神器の欠片の奪い合い。「返せッ!俺のものだ!」「お前のものなんかじゃないッ!」 秋峰の手が神器の欠片を上空に弾く。それと同時に、ヴィクトも秋峰も地面を蹴った。だが、秋峰の方が身長が高く、手が長い。(クッソ……!) 届かない、折角、ラフィが作ってくれた———そこまで考えて思い出す。〝スメラギが信じてくれれば奇跡は起こせる。信仰が力になるの〟 ヴィクトが信じれば、奇跡は起きる。それなら。ヴィクトは飛びながら念じた。(来いッ、神器の欠片!) すると、聖ユリア王国の神器の欠片はするりと秋峰の手を伝うように落ち、ヴィクトの手の中に納まる。そして、その瞬間だった。 眩い水色の光が神器の欠片から放たれる。秋峰は地面に落ち、ヴィクトは宙に浮いたまま。ヴィクトを中心にしたその光はクロムやアザカの足まで止めてしまうほど強烈な光だった。 その強烈な目を焼くような光の中、ヴィクトは見る。ヴィクトが保持していた6つの神器の欠片と聖ユリア王国の神器の欠片が次元渡りの剣と溶け合っていく。そして、ヴィクトが正面
ヴィクトが次元渡りの剣を引き抜いて、秋峰に上方から襲い掛かる。だが、ヴィクトの剣は見えない障壁に阻まれて。「ッ……!?」 そして、ヴィクトが後方に飛ぶのと同時に、クロムとアザカが切りかかるが結果は一緒で。 秋峰は余裕そうに笑みを作りながら、口を開いた。「辞めた方がいい。一番力を持っている聖ユリアの神器の欠片を持っている俺を相手にしているんだ。君たちがただじゃ済まないよ」「っ、それでも!ラフィの望まない世界は作らせないッ!」 そうして、何度も何度もヴィクトの剣で、クロムの剣技で、アザカの刃で攻撃を繰り返す。だが、秋峰は1人シールドの中で守られて、余裕で。こちらは消耗していく一方で。「は、はあ……クソ……」「あれが、姫様の力ッ……」「通らねェッ……!」 秋峰はヴィクトたちを見て言うのだ。「気が済んだかい?ああ、安心して欲しい。今日はヴィクトくんのために1日時間を空けてある。存分に、満足するまで切りかかって……駄目だった、と諦めてくれ」 その言葉に腹が立った。腹が立って、悔しくて、歯がゆくて仕方なくて。 何度も何度も、ヴィクトは諦めずに切りかかる。 だけど、秋峰の障壁には傷1つつかない。こちらは神器の欠片を5つ所持しているというのに、たった、たった1つしか持っていない秋峰に刃を届かせることすらできない。ラフィという人がどれだけ強力な力を持っていたかを理解する。「クッ……」「俺は優しいから。今からでもヴィクトくんの願いを叶える準備がある。それに、クロム、君だってラフィの解放は望むだろう?幼い時から見てきた大事な姫だ。加えるなら、アザカくん君の望みも聞こうじゃないか、だから」「うっせぇ!!!!!!!!!!!!!!」 ヴィクトは心の奥底から叫んだ。煩い、そんなこと聞いちゃいない。ラフィを助けるた
そして、作戦決行の日は訪れた。 現実では女性陣が動き、そして、ゲーム内ではヴィクト、アザカ、クロムが動く。……まあ、動くと言っても現状は秋峰からのメールで指定された、ヴィクトのホームで待つだけなのだが。 3人とも一様に緊張していた。 ヴィクトも、アザカも、クロムでさえ緊張していた。そんな中、ないはずのインターホンの音が鳴り響いた。「……おでましだな」 そんなクロムの言葉に、ついに、という気持ちになる。「最後にもう一回聞くぞ……2人とも、俺についてきて悔いはないな?」 そんなヴィクトの問いかけに、アザカもクロムも頷いた。そんな2人と拳同士を触れ合わせれば、ヴィクトは玄関の扉を開ける。 そこにはインターホンを押した人間なんていなく、あるのは扉が開かれた豪華な馬車。この空間に似つかわしくないほどの豪華な馬車。「……これに乗ればいいのかァ?」「ああ。俺の時もそうだった」 クロムが苦々しく、忌々し気に呟く。クロムが秋峰に敗れた日、その日もまたこうして馬車に迎えられた、と。「行こう。大丈夫だ」 ヴィクトはそう言って、馬車に乗り込む。馬車のソファはふんわりとしていて、尻が沈んでいって。……クッソ高そうなのは分かった。 そして、隣にアザカ、正面にクロムが乗り込めば、馬車の扉は勝手に閉まり、馬車が走り出す。--------------------------------------------------------------- 景色がどんどん変わっていった。ヴィクトが設定していた景色から、聖ユリア王国の王都を抜け、マザーグースを抜け、デストロイアを抜け、オアシスを抜け、主人帝を抜け、ドールランドを抜け———最後に宇宙のような場所を走っている。 その光景は銀河鉄道の夜を思い出させる光景だった。 そして、最後。馬車が止ま
———夜・ラブホテルの一室。「なぁんでこんなことになってるんですかねェ!?」 皇のツッコみと肌同士のぶつかり合う音が部屋に響く。えーと、瑠奈とBarで飲んでいたと思ったらなぁんかいい雰囲気になってしまってあれやそれやでラブホテル。 まあまあ、皇も瑠奈もいい大人2人で。ラブホテルですることなんて1つしかなくて。「あっ、今更ぁ?」 瑠奈はホテルに入ってしまえばごろごろにゃんにゃんと甘えて、あんあん喘ぐ始末。普段の態度はどこへ行ってしまったのやら。 そして、皇が1回射精を迎えてもちんぽが硬いのを確認すれば、瑠奈は慣れた手つきでゴムを取り換えて、古いゴムをゴミ箱に投げ入れる。そして、再度跨って今度はゆるゆるとした惰性で行うようなセックスをしながら瑠奈が口を開いた。「皇、……ぁ、また、さ……私の婚約者になりなさいよっ……」「っ……え、なん、で……」 瑠奈のまんこの締め付けに腹筋を僅かに震わせながら、皇は言う。射精したばかりのちんぽは敏感になっていて、瑠奈の中のうねりだけでびくりと反応してしまって。……射精したばかりだから出ないんだけどね! 瑠奈は皇のちんぽでオナニーをするように腰を甘く揺すりながら、淡く微笑んだ。「なんでって聞ける神経が凄いわぁ……ほんと、鈍感で、腹が立つほどっ……」 瑠奈が前のめりになる。そして、唇が重なる。ちゅ、ちゅ、と何度も唇に吸い付いて吸い付かれて、瑠奈のアルコールの香りを感じる唾液に酔いながら、皇は瑠奈を見る。すると、瑠奈が唇が触れそうなほどの至近距離で言うのだ。「……好き、大好き。皇、好きよぉ……」 まるで恋人同士のような甘い響き。その響きに反応しないほど不能ではないけど、でも、分か
昼。その日は午前で愛鹿のところの仕事は終わらせた。そして、昼と言えば当然立ち寄る店がある。そう、嬉嬉軒だ。--------------------------------------------------------------- ———嬉嬉軒。「いらっしゃいませ……皇っ!」 皇の顔を見れば嬉しそうに駆け寄って来てくれる姫沙羅に癒しの波動を感じながら皇はいつも通り席に着いた。「おう、頑張ってるな。姫沙羅」「えへへー、でしょ?」 そう言えば、姫沙羅が厨房に声をかける。「お父さーん、休憩入っていいー?皇とご飯食べたーい」 その理由で休憩通るのか!?とツッコみたくなるが、姫沙羅の親父さんは快くOKしてくれて。「って言う訳で一緒にご飯食べていい?」「断る訳ないだろ。あ、注文だけ頼んだ」「あ、うん、何食べるー?」「んー……今日は腹減ってるんだよなぁ……」 そんなことを言いながら、メニュー表を眺める。こんな日は、ガツンと重いものを。そうだなあ……。「じゃあ、醤油ラーメンとミニ天津飯で」「りょうかーいっ」 姫沙羅が注文を厨房に入れてくれる。そうして、2人してテレビを見上げればAWMのニュースがやっていた。 どのニュースもAWMを褒め称える物ばかりで、なんというか、複雑な気分になってしまう。そんなことを思っていると、テーブルに皇のラーメンとミニ天津飯、そして、姫沙羅には……。「なんか美味そうなの出てきたな?」「でしょ?メニューにはない賄~チャーシュー丼」「なんだそれ、めっちゃ気になる……」 そんな会話をしながら、お互いに「いただきます」と食べ始める。 やっぱり、嬉嬉軒のメニューは何食
あの日の作戦会議の結果。女性陣は現実世界でオルドデウス社の告発の準備をきっちり進め、皇、クロム、薊の野郎3人で秋峰との話し合いに臨むということが決定された。 それまでの日数は、悔いの残らない様過ごすことを言い渡されて。もちろん、皇たちに負ける気なんてものは一切ないが。--------------------------------------------------------------- ———翌日・朝。薊と皇のアパート。 その日は、珍しく朝食を作る場に皇も立っていた。そう言う気分だったのだ。「てめぇが生地を作ったパンケーキぜってェ膨らまねェからな」「……みたいっすね……」 2口コンロに2本のフライパンを乗せて。じっくりフライパンを温めた後、バターを投入して、溶かしてからパンケーキの生地を落とした。皇の混ぜた生地と薊の混ぜた生地。それをじっくり見ていると、薊の宣言通り……皇のパンケーキはぺちゃんこだった。「だァ———ッ、言っただろ!?混ぜすぎだって!」「いや、だってきちんと混ぜた方がいいだろ!?」「パンケーキじゃなかったらなァ!?!?」 そう言いあいをしつつも、空気は悪くない。皇も薊もこの時間を楽しんでいた。お互いに、馬鹿みたいに笑えるこの時間を。--------------------------------------------------------------- 結局、食卓にはぺちゃんこのパンケーキと程よく膨らんだパンケーキ、スクランブルエッグにウインナーが並んだ。それらを優雅に食べながら会話をする。「てめぇは金輪際製菓はやるな。向いてねェ」「ういっす……」 そう言いつつ、薊は皇が焼いた方のパンケーキをメインに食い進める。こいつ、本当いいやつ。 そんなことを思っていると